自己確認




「ヘミングバード、ぼくはもう生きるのがいやになっちゃったよ。」

「何かあったのかい? アクト−ル。」

「学校に行くと皆にイジメられるんだ。 ぼくはなにも悪いことしてないのにだよ。
ただ目つきが悪いってだけでのけものにされるんだ。 この目さえ普通の目だったらこんなことにはならないのに。」

「アクト−ルは自分の目が嫌いなのかい?」

「この目のおかげで毎日皆からイジメられるんだ。嫌いにもなっちゃうよ。」

「ぼくには君のそのギラッと輝く目がとても素敵に見えるけどね。
でも君はとても悩んでいるようだから、ここにいい薬があるよ。 悪い目つきが直って普通の目になる薬だ。君にあげよう。」
アクト−ルは薬に手を伸ばしかけて、ふと止めた。

「ヘミングバード、ほんとうは、ぼくこの目が好きなんだ。」
そう言って薬を飲まずに帰っていった。


何日か経ってまたアクト−ルがやってきた。
「こんにちはヘミングバード。 実はぼく町の演劇祭に出ることになったんだ。
あれから街を歩いていると、見知らぬ人から声をかけられたんだ。
”君はすごく素敵な目をしているね。劇に出てみないかい?”ってね。 その人は、こんどの演劇祭の監督だったんだ。 来週町のホールで上演するから、よかったら観に来てよ。」

「うん、わかった。必ず観に行くよ。」


演劇祭の日、ホールに着くと劇はもうはじまっていた。
舞台の上のアクト−ルが振り向いた時、目と目が合った。
彼の目はギラリと輝いた。
ああ、彼は将来いい役者になるかも知れないと、その時思った。


次の日、アクト−ルがお礼を言いにやってきた。
「ヘミングバード、観に来てくれてありがとう。」

「とても素晴しかったよ、アクト−ル。 ところで学校ではまだイジメられているのかい?」

「うん、イジメられてるよ。”お前の目付きが悪い。”ってね。
さてこれから次の舞台の練習があるんだ。ぢゃあまたね。」

ケロリとそう言うと、彼の目が今まで以上にギラリと輝いた。







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