母さんから頼まれたお使いを済ませて家に帰ると、
お使い篭をテーブルに置いてトイレに直行した。
台所に戻ると、母さんはひどく怒っていた。
「ダメぢゃないのそんな低い所に食べ物を置いちゃ。
早く高い棚の上に置きなさい。」
そうなんだ、僕の村には昔からちょっと変わった習慣があって、
食べ物は1メートル50センチ以上高いところに置くことのなってるんだ。
だから冷蔵庫だって、天井近くに取り付けてあり出し入れが不便でしょうがないんだ。
母さんの話だと、食べ物を高い所に置いておくと、
神様がつまみ食いをして、美味しくなると言うことなんだ。
でもちょっと信じられないから、物知りスライジーに尋ねてみたんだ。
ねえ、スライジー。
僕の村では何で食べ物を高い所に置くんだい。
やっぱり神様がつまみ食いをするからかい。
200年以上前のことだ。この村に大食い鼠が発生してね、食べ物を食い荒らしたんだ。
その上悪いことに、鼠がかじった所は病原菌がついて、
それを知らずに食べた村人が沢山病気で死んだんだ。
しかし、その鼠には弱点があってね、高所恐怖症で高い所に登れなかったんだ。
そこで、神父様が名案を考えて村中におふれを出したんだ。
『食べ物は床から1メートル50センチ以上高いところに置いて、
神様がつまみ食いをできるように。そしたら神様も喜ぶし、食べ物も美味しくなります。』
とね。
その結果、鼠に食べ物をかじられなくなり、村人も病気で死ぬことはなくなったんだ。
なんだ、そうだったのか。
それぢゃあ冷蔵庫や戸棚がある今では、食べ物を高い所に置く必要はないんだよね。
母さんにも教えてあげよう。
母さん、そう言う訳で、もう食べ物を高い所に置く必要はないんだよ。
何を屁理屈ばかり言ってるの。
昔からの習わしを大切にしない子は、うちの子ぢゃありません。
とっとと出て行きなさい!!
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