進化論




おや、市長が演説をしているぢゃないか。ちょっと行ってみないか。

私たちはどんどん進化しているのであります。
これらの機械をご覧下さい。
これは遠くが良く見える機械です。
そして音が良く聞こえる機械。
この計算機は難しい計算も楽々こなせます。
外国語だって、この機械があればほらこの通り、すぐに翻訳ができます。
そしてこの演説ですら、この文章作成マシーンのボタンを一つ押せば、 立派な演説が出来上がったのであります。
私はより文明の進化に向かって努力する所存であります。

市長、お尋ねしても良いですか。

おや、ヘミングバードか。質問があるなんて感心な子だ。
何でも聞きなさい。

もしかして、市長はその機械が無いと、 遠くも見えないし、音も良く聞こえない、 算数の計算も出来なければ、外国語だってチンプンカンプンなんですか。

その通り。だから文明の進化は素晴しいと言っているのぢゃ。

でも市長、ぼくは別にそんなもの無くても遠くまで見えるし、 音も聞こえるし、外国語だってペラペラなんです。
市長の言う通り、文明は進化したけれど、市長自身は退化してるんぢゃないですか。

ムムム・・・
ちょっと待ってくれ。

そう言うと市長は文章作成マシーンを必死になって操作し始めた。







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