統計学




ぼくの村には10家族の人々が住んでいます。
名主のセント・ジョージ家は昔からの旧家で、 1日歩き回っても歩けない程広い屋敷に住んでいます。 車も数え切れない程持っています。
大きなお屋敷の各部屋には、それぞれテレビと電話があります。
庭の中央には大きな噴水とプールがあって、夏の暑い日には、 街から沢山の知り合いが水遊びにやってきます。

そのお屋敷の北側の山の麓にギーガーガーやパトディクト、 ストンファーそしてぼくの家族の家があります。
ぼくの父さんは朝早くから山に行き木を切り炭を作って、 夕方には街に売りに行きます。
ギーガーガーは家族で山のきのこを採って暮らしています。 ぼくの父さんも母さんもきのこ料理がとても好きだから。 ときどき炭と交換にきのこを分けてもらいます。
パトディクトは水車小屋の管理人で、小麦や豆を石臼で挽く仕事をしています。
ストンファーは、ぼくの村の郵便屋さん兼、新聞屋さん兼、牛乳屋さんで、 毎朝しぼりたての牛乳と新聞を届けてくれます。
どの家もテレビや電話はないけれど、みんな楽しく暮らしています。

そんなある日、新聞に「この国で一番裕福な村」の記事が出ていました。 なんと驚いたことにそれはぼくの村で、平均すると各家庭に車が2台、 テレビが3台、電話が3台もある村なのだそうです。

しばらくすると親戚のタヨルから手紙が届きました。

拝啓

おじさんお元気ですか。
ところで、おじさんの家には車が2台、テレビが3台、 電話が3台もあるそうですね。
うちは貧しくて、車もテレビも電話もありません。 1台ずつでいいですからゆずって下さい。
よろしくお願いします。

タヨルより



はてさて、何と返事を書いたらいいのだろうかと、 父さんは頭を痛めています。







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