「ヘミングバード、君はいったい何を考えているんだ!」
友人のメモルは怒ってそう言った。
メモルとぼくは隣に住んでいたこともあって、
子供の頃からの友達なのだが、
彼はぼくと違って小さい時から秀才で勉強がよくできた。
先生の教えることや、教科書に載っていることは全て頭の中に入ってしまい、
当然試験はいつも満点だった。
「メモル、いったい何を怒っているんだい。
ぼくが何か悪いことしたかい?」
「ヘミングバード、君はこのあいだレカバグが荷物を運ぶのを手伝ってあげただろう。」
「うん、とても荷物が重そうだったからね。」
「君はレカバグが3年前にした、いたずらを覚えてないのかい。
君に虫食いのリンゴを食べさせたんだぞ。」
「全然覚えてないなあ。」
「5年前の夏に、屋根の上から水を掛けられたことも覚えてないのかい!?」
「うん。」
「去年のダンスパーティーの時には、皆の前で君のことを笑ったんだぞ。
ぼくは、レカバグが君に対してしたことは、どんな些細なことでも全て覚えているんだ。
それなのに君は全然覚えていないなんて、君には記憶力というものがないのかい!」
「そんなことはないよ。
レカバグが学校の帰り道にお菓子をくれたことは覚えているよ。
メモルに何度も勉強を教えてもらったことも、
病気で学校を休んだ時にはノートを貸してくれたことも覚えてるよ。
でもねメモル、
ぼくは頭が良くないから、
覚えている必要のないことは忘れてしまうことにしているんだ。
それでも今まで何の不自由もなく暮らしてこれたんだけどなあ。」
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