「ヘミングバード、あまり遅くならないで帰るのよ。」
「わかってるよ、母さん。」
今日は久しぶりに街に行く。
映画を観たり、ソフトクリームを食べたり・・・
「ムフフ・・・」
お手伝いをしてもらったお金が300バードもあるんだ。
楽しみ楽しみ。
停留所を降りると小さな子供とお母さんが募金活動をしていた。
「恵まれない人に募金をお願いします。」
今日はとても良い天気。気分爽快。ちょっと多いけど100バード募金しちゃおう。
「ありがとうございます。」
ムフフ、良いことはするもんだ。
映画館の前まで来ると別の親子がまた募金活動をしていた。
「恵まれない人に募金をお願いします。」
ぼくはさっき、100バードも募金しちゃったんだ。
えへへ・・・
親子の前を通り過ぎると、子供のささやく声が聞こえてきた。
「何であの人は募金をしてくれないの。」
「きっと心の貧しい人なのよ。」
ちょっとムっときた。
そして振り返ると、その親子をギュっとにらみつけ、100バードを募金した。
チェ、もう映画観れなくなっちゃった。
しょうがない、ソフトクリームでも食べよう。
お店の前まで来ると、また別の親子が募金活動をしていた。
「恵まれない人に募金をお願いします。」
ぼくは伏せ目がちにその前を通り過ぎると、ヒソヒソ声が聞こえてきた。
「あの人は心の貧しい人だから募金してくれないんだね。」
「そうね。慈善活動のすばらしさのわからない、心の貧しい人なのよ。
あなたはあんな人になっちゃダメよ。」
ぼくはくっると振り返ると100バードを募金箱にたたきこみ、
「ぼくは今日、これで300バードも募金してるんだ!」と大きな声でそう言ってやった。
家に帰ると、母さんが言った。
「あら、とても早く帰ってきたのね。」
|