「ヘミングバードおじさん、私の話を聞いてちょうだい。
まったく頭にきちゃうわ。」
「どうしたんだい、ルイサ。」
「私の友達のフューイは知ってるわね。」
「うん知ってるよ。」
「この間、彼女の誕生日だったの。だから私のお気に入りの緑の羽帽子をプレゼントしたの。
でもフューイったら一度も私のあげた帽子をかぶらないの。
とても失礼しちゃうわ。そう思わないヘミングバードおじさん。」
「ルイサ、村はずれに住んでいるメルリさんを知ってるかい。」
「知ってるわ。笑顔の素敵なとても優しい人だわ。」
「メルリさんは小さい頃にお父さんを亡くしてね。
お母さんが毎日仕事をして育てたんだ。
だからとても貧しかったんだ。皆が着ているようなきれいな服なんか持ってなかったんだよ。
彼女はそんなこと苦でもなかったんだけど、でも一つだけ願いがあったんだ。
それは学校の卒業パーティには、純白のレースの服を着て、
真紅のリボンのついた羽根帽子をかぶってでることだったんだ。
彼女は熱心にお手伝いをして、皆に内緒で帽子や服をそろえたんだ。
でも、そんなことを知らない周りの人はメルリさんのことを心配してね、
卒業パーティが近づくと、校長先生がメルリさんを呼んでこう言ったんだ。
”君はとても素直で良い子だね、メルリ。
君が卒業パーティーに着て行く服が無いといけないと思ってね、
末娘のセレが着た服だけど、君ように仕立て直したから遠慮なく着ておくれ。”ってね。
それでグリーンのベルベットの服をプレゼントしたんだ。
担任の先生はブルーの靴をプレゼントし、クラスメイト達は皆で孔雀の羽根帽子をプレゼントしたんだ。
メルリさんはパーティーの当日、自分で揃えた服を着ないで皆からプレゼントされた服を着て行ったんだよ。」
「まあ、何でそんなことしたの。
一生に一度の卒業パーティーだもの、自分の着たかった服を着て行けばよかったのに。」
「そうだね。でもメルリさんはとても優しい人だから、
皆からの善意を無にできなかったんだね。」
「よく分からないけど、人に良いことをするのって難しいのね。」
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