吉野街道を走り奥多摩大橋を過ぎると「丹三郎」が左側に現われる。建物はその昔この当たりの開祖、原島丹三郎氏子孫の住まいを改築したもので、外見も落ち着いたたたずまいだ。2年ほど前に店主が変り現在の蕎麦屋になった。内装も店主自ら携わったものらしく、木の持ち味とアイアンのインテリア等の組み合わせは、他の奥多摩の店では見られない良質の品の良さを醸し出している。遠方からの年輩の客が多くいつも混んでいるので、僕は必ず空きを確認して行くことにしている。とは云っても、店は僕の住まいから川を挟んだ向いに位置しているので、家を出る前に電話をするだけのことだ。店員の応対も非常に好いので、快く席を取っておいてもらえる。
さて、ここの蕎麦は旨い。細切りでのど越しが良く、つゆも好い。実はうどんも好い。どれも食べたい欲張りな僕は決まってプチ蕎麦懐石「蕎麦善」を頼む。プチと言っても品数はある。蕎麦の実の三杯酢から始まって、突き出し、若鮎のフライ、蕎麦がき、天麩羅、蕎麦、蕎麦菓子デザートのメニューで2000円。
それに蕎麦(うどんも選べる)はお代わり自由で、2人で来れば両方愉しめる。デザートも蕎麦饅頭、蕎麦団子のぜんざい、蕎麦アイスクリームなどから選べる。ボリュームといい、品数といい、自信をもってお薦めできる。一度「蕎麦善」を食べてしまうと、蕎麦だけ注文する勇気は持ち合わせなくなってしまう。間違いない。
前のご主人は今、青梅市梅郷の梅の里公園近くで沖縄料理の店「ゴーヤ」をやっている。「丹三郎屋敷」だった頃の山椒がピリっと効いたわっぱ飯を今でも思い出す。
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