タイルの面白さにひかれて始めた作品作りも、年月が経つにつれて不満が持ち上がってきました。
それは、どうしても平面的な域を越えられないもどかしさでした。
タイルのペインティングやモザイクの加工は、「絵」を描く上ではとても面白いのですが、どうしても平面的になってしまいます。
立体的な表現を求めて、テラコッタなどの土物作品を目指した時もありました。
人間の顔をモチーフにした立体的な作品を作り、銀座松屋のギャラリーなどで個展も開催しました。
土からの造形はたしかに立体的な表現としては魅力的な創作ですが、
タイルと言うイメージからは少し(かなりかな?)離れて、陶芸の世界に近くなってしまいます。
タイルの最大の魅力は2次元的な可能性を内在しているところなのに、
その魅力を捨ててしまう行為に近づいてしまうのです。
かと言って、モザイク技法を用いた立体表現は躯体(ボディー)の製作と、その表面に砕いたタイルを貼るという行為が、自由な創作を目指す者としては好きになれなかったのです。
接着剤でタイルを張り合わせた作品作りにも挑戦してみましたが、
完成度が上がりません。未熟な作品の域を出ないのです。
完成度を上げるために造形的なチャレンジをすると、今度は強度の問題に悩まされました。
「作品にはお手を触れないでください」と表示するのは簡単です。
しかしタイルは焼き物ですから、耐久性に優れています。実用に使ってこそ初めてタイルの魅力が発揮されるのです。
せっかくの魅力を放棄してしまうことになってしまうのです。
タイル魅力を発揮しながら、平面的ではない表現には何があるのだろうかと、何年ものあいだ悩んでいたのでした。
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